マレーグマの頭のなか

文章を 書くだけなら タダ

荒野に水を撒く

 友人と服を買いに行く。彼と僕の服の趣味はまぁ似たようなもんで、彼と僕の体型や顔の大きさまでさらに似たようなもんで。遠目で見たら兄弟とは言わないけど彼と僕は似たようなもんじゃない?って言われることもままある。

 

 平日の仕事帰りで、10時始業のサラリーマンが行く場所は限られている。そして、低年収の我々が行く場所は決まっている。UNIQLO、GAP、無印良品だ。そして今回は我々最後の砦である無印良品に赴いた。

 

 僕は全く買う気はなかったのでウィンドウショッピングを楽しんでいたが、友人は色々と品定めをしつつ店内をうろついていた。と、ここで気づく。汚い。コイツが通った後の棚が汚い、と。取り出したシャツを畳まない、別の場所に置きっぱなしにする、適当な棚に置いたままにする…。「なんだコイツは…なんなんだ…」と新種の昆虫を採取する学者みたいな面持ちをしていたと思う。

 

 ちょっとなんとかせんのんかと言っても「店員さんがなんとかしてくれることに気付いたんや…ワイは…」みたいなエセ関西弁を使われて戸惑う俺。それは違う、それは違うよあんさん。と感じたのですかさず「いやこれはね、他人のおうちに行った時に、玄関で靴を揃えて脱ぐかどうかみたいなもんだと思うよ」ととっさに口から出たがこの例えが正確になぞらえているとは思えない。気持ち悪さを胸に、俺は彼の踏み荒らした荒野に水を撒きながらついて歩いたのである。それがほとんど無駄と知りながら。