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マレーグマの頭のなか

文章を 書くだけなら タダ

平凡な物語

 普通、物語の主人公は周囲が慣習として受け入れているものに対しての異変に気付くタイプが多い。年に一度は森の主に村の生贄を出さないといけない風習に異を唱える主人公。異種族を好きになってしまい種族の対立に巻き込まれて好きな人を好きと言ってはいけないことに嘆く主人公。戦争はいけないと声高に叫ぶ主人公。こういうのがよく主人公として扱われるタイプではないだろうか。なぜこういうタイプなのか、それは普通に対する異常でなければ物語が起きないからだ。静に対する動。日常に対する非日常。物語は平々凡々では物語たり得ない。しかし「この世界の片隅に」の主人公であるすずは、決してこのタイプではない。知らない人との結婚を受け入れ、戦争を受け入れ、右手を失ったことを受け入れる。これは仕方のないことだとも考えていないかもしれない。村の掟は守るべきものであるのならば、それが当然だと思っているタイプの、生贄に選ばれる側の人間だ。すずは決して特別な人間として描かれてはいない、むしろ平々凡々と生きている我々と同じ、あの時代に生きていたはずの彼らと同じだ。だからこそ、リアルに写っていく。