マレーグマの頭のなか

文章を 書くだけなら タダ

瞬きを待つ間のまばたき

一人暮らしを始めてから、何かに隠れて何かをするということがなくなった。例えば体育館の倉庫の隙間だったり、屋上に続く踊り場だったり、周りからは見えにくい川沿いのいつものベンチだったり、いつもの駅から五つほど離れた知らない隣町だったり。親の監視から逃れるために友だちと映画に行くなんて嘘をついて、そこにはスリルがあって、いつもの誰かから見られる恥ずかしさなんてない。二人だけの楽園だった。いつも制服を着ていた僕らは日常の手から逃れるための手段をどうにかして生み出そうとした。大人になると、隠れて何かをするのは法だけ。スリルが足りなくなったら犯罪を犯すしか、ない。

 

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窓から見えるビルの工事現場の隙間から、星のように瞬いているひかりが見える。パパパパッと白い、真っ白なひかりと赤くサッと広がる火花のひかり。溶接のひかりだと分かっていても綺麗だから次はいつ瞬くのかと思ってビルの方に目が向いてしまう。流れ星を待っている子どもみたいに、願うことは決めてないが、この仕事が終わればいいなと心の奥底で弱く瞬いている。